溝鼠ー200 佳代子のお金なの [現代小説ー灯篭花(ほおずき)]

圧し潰された箱の口から、少し飛び出して一万円札が見える。
「お金でしょ。何処にあったのさ」
「鏡台の引き出しの中に押し込めるようにして入ってたよ・・・」
「幾ら入っているのさ」
「知らないけどさ。驚いちゃった」
勝子が、潰れたテッシュの箱を補修し中からしわくちゃになった一万円札を取り出しってテーブルの上に並べた。
人差し指と親指を舐めながら札を数え始めた。
この金は、道男が探していた金だ。その金が佳代子の部屋から出てきた。
道男に言う訳にはいかない。どうしようか。咄嗟に思いついた。
そうだ、椰季子が、モトの部屋から見つけたことにしよう。
「300万あるよ」
「佳代子のお金なの・・・」
「あの子が持っているわけないしょ」
「それじゃ、このお金は・・・」
「婆ちゃんのお金さ」
それを聞いた椰季子が突然大きな声を出した。
「お願い、私に貸して」
勝子が皺になった札を手の平で伸ばしていたが、あまりにも大きな声に驚き手を止めた。
「どうするのさ」
椰季子が少し困った様子だったが
「彼が来てるの」
「彼って・・・。あんたのかい」
椰季子が頷いた。
勝子が、唖然としている。
「実は、一緒に来たの。駄目だっていったんだけどさ・・・勝手についてきたの」

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