亡魂-33金箔を貼った 

「隧道を抜けてからの天候も当然気象庁から、発表されています。地元の者は、峠を越えて向こう側に入ると、吹雪になっていることを知っておりますので、常に隣町と連絡し合っております。状況によっては、その日は、峠越えを控え、晴れるまで待ちます」
「すると、一時、人や車両などが、歌見川町から元川市に入ることが出来なくなる訳ですか」
「そうです。何せ、猛吹雪なので、どんな状況に陥るか分かりませんので・・・」
「何日も続くのですか」
「そうですね。天候によりますが、長くて二日程度でしょうか。余所者は、地元のことをよく知らないので、警報が出ていても、無理して峠越えをするのです」
「金一さんも、それで峠越えをしたのでしょうか」

「甘く見たのか、良くは知らなかったのか、その辺は、分かりません」
久米島の座っている場所から次の間が見えた。仏壇が見える。
「ああ、仏壇が置いてありますね」
「ええ、支局長さんから話を聞いたので、早速、荷を解き、この場所に祀りました」
「ちょっと、見てもいいですか」
「どうぞ、未だきちんと祀っておりませんが」
久米島は、立ち上がって次の間に行った。金仏壇である。全体に細かい細工が施されて、その前に立つと一段と仏壇が際立って見えた。
良い匂いがする。線香の匂ではない。檜の匂か。金箔を貼った堂々とした仏壇の姿に圧倒された。仏壇の中央には、湯吞椀や仏飯器が上がっており、下段には、写真が飾ってあった。
「写真をちょっと拝見させて貰えませんか」
久米島が国井芳次郎に訊いた。
「ああ、どうぞ」
国井が仏壇から写真を取り出して見せてくれた。
偶然なのかどうか分からないが、事故で亡くなった3人が写真の中に納まっていた。

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