亡魂-29 首を傾げながら

スクラップブックは、保存してあるはずだから調べて、明日にでも電話を入れるといってくれた。
翌日、工藤から電話があった。今日、元川市の警察へ行くから、その時にスクラップブックを持参して行くといってくれた。
その日、久米島が元川警察へ行くと既に工藤が来ていた。
「いや」
ソフアーに座って煙草を燻らせながら笑顔で、久米島に右手を振っている。
工藤は、でっぷりと太った人で年の頃40といったところだ。四角い顔に黒縁の眼鏡を掛け、ちょぼ髭を生やしている。
久米島も微笑みながら近づき工藤の前に腰を下ろした。胸のポケットから煙草を一本取りだして火を点けた。
「古い切り抜きを今頃どうするんだよ」
久米島は、たばこを燻らせながら、今までの概略を話した。
工藤は、頷きながら聞いていたが、話の途中で、突然、顔の前に腕を伸ばし右手を広げて話を遮った。あまりにも突飛な話に、あっけにとられたらしい。
「ちょっと待ってくれ。ほんとの話かよ」
工藤が、呆れ顔でいった。
「それが、信じられない話だけれど、本当だよ。俺も最初は、信じられなかったが、だんだんそれらしき事実が生まれてくるものだから、それで調べてみようと思ったんだよ」
工藤は、それでも信じられないのか、首を傾げなら
「まあ、一応、その時のスクラップブックを持ってきたので探してみたら」そう言ってスクラップブックを久米島に手渡した。
「助かります。警察でも分かると思ったんだが、何せ警察は忙しいところだから・・・」
「いいんだよ」
工藤は、快くスクラップブックを貸してくれた。
支局へ戻って久米島は借りたスクラップブックを開いた。
平成15年の2月の切り抜きを丁寧に見て行った。
なかなか見つからない。確か小さく載っていたといっていた筈だ。工藤は、二度目にやっと見つけることができた。

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