亡魂-23脇腹を小突き

ヨネの少し斜め後ろに座った幸一は、ヨネの手が見えた。
ヨネは、手をしっかりと握り占め右膝の上に置かれていた。そのこぶしが、ぶるぶると小刻みに震えている。
幸一が、昭三の脇腹を小突き、ヨネの方へ顎をしゃくった。
昭三は、顔を少し前に出しヨネの手を見て目を大きく見開き頷いた。
幸一が「移転したことは、分かってくれましたか・・・」と訊くと霊が頷いた。
それから少しじっとしていたが、突然「水」と大きな声でいった。
最初は、何のことか分からず、幸一が昭三の顔を見た。昭三も分からないでいると
「どんぶりで水を・・・」
といった。
「飲む水ですか」と訊くと
霊が頷いた。
キネが、咄嗟に台所へ行き、水を汲んできた。それを霊の前に置いた。どんぶりには、溢れんばかりの水が入っている。
「水を持ってきました」と幸一がいうと霊がどんぶりを両手で持ち口へ運び一気に飲み干した。
飲み干すと太くて低い声で
「悔しい・・・」とひとこといった。
その声は、絞り出すような声だった。
幸一も昭三も訳が分からなかった。
「何かありましたか」と訊くと
霊は黙ったままである。

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