亡魂ー31 剣のある言い方

翌日、久米島は、早速、調査に取り掛かろうと思ったが、どこから手を付けてよいものか分からなかった。直接、警察へ行って調べるか、それとも、国川芳次郎の家を訪ねて、もう少し話を訊いてからにした方がいいものか迷った。
支局長は、既に歌見川町へ取材に出掛けた。
暫くの間、窓から国道を走る車を漠然と眺めていた。
そう、難しく考えることないだろう。取っ掛かりやすいところから、始めようと思った。
その結果、やはり、直接、国川芳次郎から話を聞き、そのうえで、警察へ行き調べてみようと思った。
早速、久米島は、国川芳次郎の家を訪ねた。女が出てきた。
怪訝な顔をしながら
「何でしょうか・・・」
少し剣のある言い方である。
「突然ですが、国川芳次郎さんは、いらっしゃいますか。私、こういうものです」
久米島は、そういって名刺を差し出した。女の顔が、ぱっと明るくなった。
「ああ、ちょっと待ってください」女の声が、突然変わった。
女は奥へ引っ込み、少ししてから、また出てきた。
「あの、どんなご用件でいらっしゃったのかとのことですが」
女の態度が、先ほどと違いがらりと変わっている。
「ああ、実は、昨日、うちの支局長の工藤がこちらに伺ったはずですが、その件で、もう少しお聞きしたことがあるのですが」
「ああ、そうですか、少しお待ちください」
そういって、また奥へ引っ込んだ。
家の中がひっそりとしている。物音ひとつしない。国道の裏側だ。少しは、車の音が聞こえて来てもよさそうなものだが、それがない。
廊下をパタパタと音を立てながら足早にこちらへやってくる音がした。
先ほどの女である。
「お上がり下さいとのことです」
久米島は、案内されるがままに女についていった。
この家の外観は、新築したばかりのように見えたが、中は少し古めかしく、壁や板の間の処処に傷がついていた。
案内されたところは、四畳半だった。昨日、支局長が話していた場所だと久米島は思った。

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