亡魂ー25 10時に会うことにした

幸一は、ヨネの口から出た「悔しい」という言葉が気になった。あの悔しさは、普通でない。よっぽどのことが、生前にあったのだろう。
そのわけを知りたかった。
「是非、訊いてみたいですね。連絡が取れますか」
「すぐ前の店の裏側ですから、行って訊いてみますか。その方がはっきりするんじゃないですか」
以前、ここに住んでいたのは、国川芳次郎といって、温厚で話がよく分かる人だ。6年間ほど町内会長を務めた人でもある。年齢は、既に70歳を超えており、奥さんが、64歳で亡くなっていた。
川村昭三が電話を入れると明日は、居るという。10時に会うことにして電話を切った。
翌日、幸一と昭三が二人で国川芳次郎の家を訪ねた。建物は、平屋の木造モルタル造りで、未だ建って間もないのか、壁も屋根も真新しい。玄関の屋根は、三角屋根だった。引き違い戸を開けて入ると芳次郎の息子の妻である恵理子が出てきた。
川村昭三の顔を見ると、笑顔で軽く頭を下げた。
「久し振りです。皆さんお元気ですか」
昭三がそういって笑顔で恵理子に挨拶をした。
「今日伺ったのは、爺さんにちょっと聞きたいことがあってきました。居りますか」
「はい、居ります。さあ、上がってください」
部屋に入ると六畳二間に四畳半が一間あった。その四畳半に芳次郎が座布団に座り釣り竿の手入れをしていた。


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