亡魂-34ひょろりとした体で

「この男性は・・・」久米島は、写真の中の男を指さして訊いた。
「それが、運転していた金一です」
男は、女の横で眉間に皺を寄せて立っている。ひょろりとした体で、顔は少し面長で色が白く、どこか神経質にみえる。
「この方が、甥御さんですか」
「そうです。その横が上条恒子に子供の勝治です」
「恒子さんは、39歳で亡くなったとか・・・」
国井芳次郎が、頷いた。
女は、小柄で、色が白くふっくらとした顔で、それに目が大きく少し童顔である。
「まだまだ、これからという時に、事故に遭い実に残念です」
「お気の毒です」
「この写真を見る度に、死んだ恒子は、どんなに悔しかったかと思うと・・・」
「・・・」
久米島は、頷いていた。
久米島は、それ以上のことを何も訊けなかった。話が少し湿っぽくなり早々に帰ってきた。
戻ってくると支局長が取材から戻ってきたところだった。
「ご苦労さん」支局長が久米島に声を掛けた。
「行ってきました」
支局長は、どうだったか話を早く訊きたいといった顔をしている。早速、久米島が国井芳次郎との話の内容を説明した。
聞いていた支局長は、頷きながら聞いていたが聞き終わってからいった。
「やっぱり、視界不良で事故に遭ったのかね」
「ん、そういうことになりますね」
「従弟の方は、小さい頃から、この町で育ったのだよね」
「そうだと思います」
「そうであれば、峠の状況は、良く知っている筈だが・・・」
「そういうことですよね」
「知っているのに、なぜ、無理して峠越えをしたのか、そのあたりが良く分からないね」
「本人が亡くなっているので、調べるわけにいきませんよね」
「やはり、吹雪による視界不良で、それでスリップしたか、何かの調子でハンドルを取られて運転を誤り崖下に転落したものか・・・」
幸一は、そういいながら、長谷川ヨネの苦悩した顔を思いだしていた。

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