溝鼠-202チャイムが鳴った [現代小説ー灯篭花(ほおずき)]

「そしたらさ、200万円を貸してやるから。このことは、お父さんには内緒だよ。残った100万円は、婆ちゃんの部屋にシンクがあるからさ、そこの収納キャビネットの中へ入れてきて」
今度は、椰季子が驚いた。
「いいのかい・・・」
椰季子が、飛び上がらんばかりに喜んだ。
「良いも悪いも。仕方がないっしょ」
椰季子が、肩を窄めて、勝子に手を合わせ、テーブルの上のポリ袋に入った200万円と100万円をそれぞれ新聞紙で包んだ。
「早くそれを二階へ置いてきなさい」
椰季子が、飛び出すようにして部屋を出て行った。
その時、ガレージの開く音が勝子の耳に入った。
勝子が慌てて階段下へ行き二階へ声をかけた。
「お父さんが帰ってきたよ。早く降りてきなさい」
いつもより帰って来るのが早い。
椰季子が降りてくるのが遅い。
「早くしなさい」
大きな声で叫んだ。
椰季子がドアから首を出した。
「早く早く」
椰季子がパタパタとスリッパの音を立てながら降りてきた。
チャイムが鳴った。

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