溝鼠-204ガシャンと音が [現代小説ー灯篭花(ほおずき)]

キャメルのストールの下から新聞紙が見える。取り出して新聞紙を広げポリ袋を取り出した。
重さが、先ほど持った200万円の感触と少し違う。ポリ袋の中から札を取り出した。
厚さが1センチ程度だ。これが、200万円か。椰季子は、札を数えてみようと思ったが、そんな時間がない。
もしかしたら、収納棚に入れたのが200万円か。
椰季子は、愕然とした。
(どうしようか)
取り換えなければと思った。100万と200万は違う。椰季子は焦った。
急いで100万円をポリ袋の中へ入れて新聞紙で包んだ。それを持って立ち上がった。
ドアの傍へ行き聞き耳を立てた。静かだ。そっとドアを開け外を覗いた。
階下から何も聞こえない。椰季子は、ドアをそっと出た。
隣のモトの部屋の前に立ち静かにドアを開け滑り込むようにして部屋の中へ入りドアに閉めた。
ドアに耳を付け階下から上がってくる様子がないか再度聞き耳を立てた。
何も聞こえない。静かに収納キャビネットへ近づき扉を開いた。
200万円が鍋底の上に無造作に乗っている。先ほどポンと投げ入れたままの姿だ。
鍋の底に乗っている200万円をそっと取り出し、持ってきた100万円と重さを比べてみた。
持ってきた100万円の方がどう見ても軽いし厚みも違う。間違えてボストンバッグの中へ入れたのだ。気が付いてよかったと持った。
持ってきた100万円を鍋底の上に置くわけにもいかない。モトが隠すとするならば、収納棚の隅にでも仕舞わなけらば不自然だ。
椰季子は、重なっているフライパンや鍋を一度取り出さなければならないと思った。
しかし、下手するとそれらが崩れ落ち大きな音がする。
細心の注意を払う必要がある。椰季子は、立膝をしていたが、座り直して、その場に胡坐をかいた。
中から両手で一個一個取り出した。
「ガシャン」と音がした。
重なり合っていたフライパンと鍋の蓋が崩れ落ちた。
しまったと思ったが遅かった。階下へ聞こえたはずだ。
慌てて落ちた鍋の蓋を取って収納棚へ入れようとしたら、また鍋の蓋同士がぶつかり音がした。
急がなけらば思った。

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