亡魂ー9 前頭部を

夜の10時頃、お開きになった。幸一が、立ち上がろうとして、一瞬、足が縺れた。そのため、上体がふら付き、前のめりでガラス戸へ前頭部を打ち付けた。
「危ない・・・」と一瞬キネが声を挙げた。
幸いガラス戸の竪桟に頭を打ち付けたので、助かったが、もし、ガラスに直接頭を打ち付けていたらと思うと、キネは、ぞっとした。兎に角、大事に至らなかった。
幸一は、酔いが醒めた。
転勤してきて4か月目になる。そろそろ、疲れが出てきたのだと思った。

幸三が、暑いのか、布団を蹴って下着姿で眠っていた。幸一は、そっと布団を掛け直し、自分も横になった。先ほど打ち付けた前頭部を中指で、そっと撫でまわしてから掛け布団を胸のあたりまで引っ張り上げて目を瞑った。直ぐに鼾を掻き始めた。
その夜は、何事もなく終わった。
翌朝、目を覚まし台所の窓から見える国道に目を遣った。昨夜の川村昭三の話を思いだした。
ここは、後背湿地帯なのかと改めて思った。
家の改築は、順調に進み、完成までもう少しだった。
澄子が、相変わらず一緒に隣で寝ることを嫌がる。それで、完成するまで待つことにした。
引っ越し荷物は、キネと子供たちが小さいものを一つ一つ隣の家に、運び入れた。澄子は、キネにいわれて仕方がなく小さい物を運んだ。
幸一は、既に新しい事務所で仕事をしていた。
事務所には、幸一の他に職員が一名配置された。齢のころ26,7といったころで、独身男性である。
旭川支社からの転勤でこの支局に来た。

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