亡魂-ー20 響きがあり通りの良い声が

「もしもし、長谷川ですが・・・」
響きがあり通りの良い声が耳に入ってきた。昨日の女の声だ。
「あの~、昨日、お邪魔しました工藤ですが」
「ああ、昨日は、ご苦労様でした。婆ちゃんに訊きました。そしたら、行けるそうです。ただ、元川までの足がないので、よろしかったら、そちらで手配して頂けましたらとのことです」
「ああ、有難うございます。車の方は、こちらの方で何とかします。それで、ご都合の良い日は、何日がよろしいかヨネさんに訊いて頂けますか」
「毎週、木曜日が検診日ですので、それ以外の日であればとのことです」
「それじゃ、なるたけ早い時期に御願いしたいので、三日後の月曜日は、どうでしょうか、ヨネさんに訊いてみて下さい」
「分かりました。それじゃ、確認してから再度お電話をいたしますので、一箪電話を切ります」
小一時間ほどして、電話が来た。了解したとのことだった。
長谷川ヨネが来ることになった。
送迎は、幸一同乗の上、川村昭三の自家用車で行くことになった。
当日、朝の九時半ごろに上元川町に向かい同10時半ごろに元川市に戻ってきた。
車から、白髪で腰の少し曲がった老婆が、杖を突きながら降りて来た。
よろよろとして、今にも転びそうなおぼつかない足取りで、ゆっくりと一歩一歩大地を踏みしめるかのようにして歩いている。幸一がヨネさんの傍に付ききりで、一緒にゆっくり歩いている。
キネが、玄関から出て小走りで近寄って行きヨネに
「ご苦労様です。本日は、有難うございました」といって頭を下げた。するとヨネが、ちょっと立ち止まり軽く頭を下げた。
幸一と昭三が、ヨネの両側にそれぞれ立って腕を抱えている。
玄関に入り上がり框を上がり、引き戸を開けて一歩居間に入ると、ヨネがその場に立ち止まった。

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