溝鼠ー218勝子の顔にどこか安堵の  [現代小説ー灯篭花(ほおずき)]

そしてまた目を瞑った。
「お父さん・・・、お父さん・・・目を開けて頂だい」
道男の頭を撫でながら、勝子が真剣な目をして声を掛けている。
「やっと、気が付いたようね・・・」
道子が勝子の横から首を伸ばしながら道男の顔を覗き込んでいる。
「でも、良かったしょ。目を開けたから・・・」
勝子が小さく頷いた。
「これから、お父さんも大変だね。リハビリーが待っているから・・・」
まるでひとごとのような言い方だ。
「リハビリーを頑張ってしてくれなきゃ家族が大変だよ。あんたも困るしょ」
道子がキョトンとした顔で勝子の顔を見た。
「そうでしょ。だって、私だって、いつお父さんみたくなるか分からないっしょ。そうしたら、あんたどうするのさ」
「お父さんのことだから、きっと頑張るしょ。ねえ、お父さん」
道子が、道男の顔を見ながらいった。
昨日と違って、勝子の顔にどこか安堵の色が浮かんでいた。勝子が、いつもの勝子に戻ったようだ。
「光子が来るの遅いね。明日だろうか」
「昨日の電話では、飛んでくるようなことを言ってたけど、遠いからね。直ぐにこれないしょ・・・」
「そうだね。稚内でしょ。姉さんも大変ね。あちこち転勤して歩くから」
「今は、釧路だって」
「えっ、釧路にいるの」
「そうだよ。昨日電話したとき、そういってたよ」
「釧路なの。それじゃ、飛行機なら早いけど、列車なら一日掛かるよ」
「着くのは明日だろうさ」

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