溝鼠-220誰に似ているんだろうか [現代小説ー灯篭花(ほおずき)]

その日は3時間ほど道男の傍にいてから病院をでた。二人は、スパーにより昼と夜の弁当を買って家に戻った。
家に戻ってからも、もっぱら道男の話よりも主治医の話になった。
道子は、主治医の後姿があまりにも道男の後姿にそっくりなので何となく薄気味悪かった。
「あの先生、それにしても、お父さんに似てるね」
道子がいった。
「何処ら見ても他人だと思えないね」
勝子が首を傾げた。
「お父さんの兄弟だって3人でしょ。もしかしたら、久仁子さんの孫かもしれないね・・・」
勝子が、食べている弁当の箸を止め
「孫ってあんなに似るもんかい」
そういって道子の目を見た。
「違うだろうか・・・」
二人は互いに首を傾げ乍らその夜は、風呂に入って寝た。
翌日、朝の8時過ぎに光子から電話入った。寝台特急で着いたところだという。
「飛行機で来れば楽なのにね・・・」
「光子は、飛行機が嫌いなの。高所恐怖所だから」
「子供のころからなの」
「そう、小さい頃に向かいの公園で欅の木に登り下りることができないで、それこそ気が狂ったかのようして泣き叫んだことがあるの」
「どうしたの・・・」
「その声がここまで聞こえて、私が飛んで行って助けたさ」
「そんなことあったの」
「それ以来、高いところが駄目なの」
「誰に似てるんだろか・・・」
「お父さんかもしれないよ。だって、庭のあの木だって登ることができないんで、伸び放題になって、すごいしょ」
勝子が庭から見えるナナカマドの木を見ながらいった。

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