亡魂ー4 5尺2寸ほどの小柄な男

キネの夫、幸一は、新聞記者だった。転勤でH新聞道南支社からの移動だった。
そのころ、未だこの町には支局がなく、それで新聞販売店の一室を借りての間借り生活となった。

幸一は、仕事をしながら、事務所と住宅を併設した物件を探したが、なかなか見つからず、探しあぐねていたら、新聞販売店の店主が、棟続きの隣の建物は、自分の物なので、そこを改築するから、入居しないかといってきた。隣には、他人が住んでいる。現在入居している人に家を明け渡してもらわなければならない。
一か月ほどして燐家から、そういうことなら致し方がないので出て行くと言って来た。
この町に来て、丁度3か月目のことだった。
新聞販売店の店主である川村昭三は、五尺二寸ほどの小柄な男だが、体がよく動く人で、大工気があるという。それで、燐家は、自分一人で改築するので、入居は、半年ほど待ってくれと言ってきた。
幸一は、知らない街に来て、伝手もなく、そう簡単に事務所を併設した住宅など見つかるはずもないと思い。川村昭三に任せることにした。

燐家が出て行った翌日から川村昭三は、新聞の配達が終わると、頭に日本手ぬぐいを巻き右の耳に鉛筆を挟み内装工事に取り掛かった。壁を剥がしたり、床を剥がしたりと、こまめに動き回っている。時々、床下にもぐり込み、ごそごそと何やらやっている。暫くしてから床下から顔を出し、目の前にある角材を引き寄せ、床下に下し引き摺りながら建物の端の方へ潜り込んで行く。

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