溝鼠ー221得て勝手だ [現代小説ー灯篭花(ほおずき)]

確かに道男は、高いところが苦手だった。これもモトに似ていると勝子は思った。
その日は、朝からどんより曇り、それに強い風が吹いていた。朝のテレビの天気予報では、一日中烈風が吹くといっていた。
光子がタクシーで11時頃に到着した。勝子に似ていて小柄だが太っている。尻周りが大きくでっぷりと太っている。その体を揺さぶりながら
「風が強いね。まるで台風並みだね」
といいながら光子が入って来た。
着くなり水を飲ませてくれといって道子に頼んだ。
道男がいつも座る長椅子に腰を掛け胸元から取り出したガーゼハンカチで顔を拭った。
「なんかすごく蒸すね。いつもこうなのかい」
そういいながら、道子が持ってきたコップの水を一気に飲み干した。
「のどが渇くの。今日、暑くない」
そういって着ている薄手のパープル色のカーデガンを脱いだ。
「それで、お父さん、どうしたのさ。脳梗塞だって」
手に丸めて持っていたガーゼハンカチで口の周りを拭きながら勝子に訊いた。
「中ったんだって」道子がいった。
「また、酔っぱらって怒鳴り声を出したんでしょ」
「そうじゃないの」
勝子は、これまでの佳代子のことを話して聞かせた。
「佳代子、そんな子じゃないしょ」
「お父さん、あまりにも佳代子に期待をかけすぎて、なんだか裏切られたような感じになんたんでしょ」
「それで頭に来たの」
「佳代子に男がいたのがショックだった見たい」
道子がいった。
「いたっていいでしょ。歳なんだから・・・何が悪いの」
「悪いことないけどさ。お父さんにしてみたら、考えてもいないことだったじゃないの」
「馬鹿みたい・・・そういう考えが得て勝手だというの」


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