亡魂ー6カタカタと

翌朝、澄子が、幸一の所へ来て、今晩は一緒に寝ないという。どうしてかと訊くと、音がするからだという。
「どんな音がしたんだ」と訊くと
「カタカタした」という。
「カタカタ・・・そう聴こえたのか」
澄子が頷いた。何となく不安気な顔をしている。
「カタカタか・・・」
幸一は、音がして目を覚ましたが、どんな音だったか、はっきりと覚えていない。
「カタカタか・・・」
澄子が小さく頷いた。
「道路を走る車の振動で家が揺れたんじゃないか。きっと、その音だ」
澄子が、納得しがたいのか、うつむきながら首を左右に振った。
「それじゃ、何の音だ」
「分からない」
澄子は、そういって、走って玄関から飛び出していった。
幸一は、澄子に何度もいわれて、何となくそのような音を聞いたような気がした。
確か、「カタカタ」と小さく小刻みに鳴っていたような気がする。
幸一は、昨夜のことを一心になって思い出そうとした。

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