亡魂-8 後背湿地帯で

気が付いたら、朝だった。昨夜から今朝まで、熟睡した。
澄子と一緒に聞いたあの音は,何であったのだろうか。考えたも分からず、やはり、家の前を走る大型トラックだったのであろうと幸一は思った。
川村昭三にそのことを話すと
「この辺一帯は、昔、田圃や畑だったので、地盤が弱く、大型トラックなどが通ると、きまって、建物が軋むので、恐らく、その音でしょう」といって笑った。
幸一は、それを聞いて納得した。
その日は、仕事に追われ、そのことを忘れていた。
その日の夕飯に昭三を呼んで、酒を酌み交わした。
「この辺は、そんなに地盤が良くないのですか・・・」
幸一が昭三にビールを勧めながら訊いた。
「昔ですが、この辺りは、石狩川が近いので、雨で川が氾濫すると、水が、この辺りまで来ていたそうです。ところが、その水が、なかなか引かなくて湿地や沼になっていたそうですよ。だから、地盤が悪いのです。その名残でしょうか」
「そうですか、目の前の道路は、国道ですよね」
「ええ、昭和の初め頃にできたそうで、北に真っ直ぐ行くと旭川へ行きます」
「すると幹線道路か・・・」
「そうです。如何せん、後背湿地帯で、向かいの商店やその隣の住宅などは、注意深く見みると左側に傾いているでしょう」
「いや、気が付かなかったが・・・」
「南側の方は、少し、地盤が良いそうです」
幸一は、川村昭三の話を頷きながら聞いていた。

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