亡魂ー18 三味線の音が

ここに間違いないだろうと思い、久米島は、引き違い戸を静かに開けた。
「御免下さい・・・」
返事がない。奥の方から三味線の音が聞こえる。黒田節だろうか、三味線の音が心地良い。
「御免ください・・・どなたかおりませんか」
三味線の音が止まり、奥から「は~い」といって女の声がした。
玄関口に出てきたのは、年の頃35.6才といったところで、和服を着ていた。
「何か・・・」
「長谷川ヨネさんは、ご在宅ですか」
「婆ちゃんですか、生憎、今、出掛けております」
「ヨネさんに御願いがありまして伺ったのですが」
女は、ヨネと聞いて察したのか
「ああ・・・」と女は云い少し困ったような顔をした。
「どんなご用件ですか」
「除霊して欲しいのですが」幸一が訊いた。
「そうですか。でも出来るだろうか・・・、齢のせいか、先日転んで足を痛めたものですから、それで今日も病院へ行きましたの」
「病院ですか・・・」
「ええ、なにせ歩くのが大変なものですから」
「・・・」
幸一と久米島は、顔を見合わせた。
「無理かな・・・」
女は、申し訳なさそうな顔をした。

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